代表・行政書士
千葉直子
障害福祉専門 あいまり行政書士法人 代表行政書士 千葉直子
放課後等デイサービス・児童発達支援、就労系を中心に、障害福祉事業の開設支援から運営支援、法改正対応、運営指導対策まで一貫してサポートしています。制度の条文解釈だけでなく、現場実務や事業継続を見据えた「実装できる制度対応」を重視し、事業者が安心して支援に専念できる体制づくりを支援しています。福祉系大学卒業
Contents
放課後等デイサービス・児童発達支援の現場では、身体接触を伴う支援が日常的に行われています。では、日本版DBS(こども性暴力防止法)でいう「児童対象性暴力等」と「不適切な行為」は、どこで線引きされるのでしょうか。本記事では、こども家庭庁ガイドラインをもとに、トイレ介助・着替え・パニック時対応など、障害児通所支援事業所で実際に起こる場面を例に、療育現場で気をつけるポイントをわかりやすく解説します。
目次
~療育現場で気をつけるポイント~
こども性暴力防止法、解説シリーズ、第3回です。
今回は、放課後等デイサービスや児童発達支援の経営者様、そして児童発達支援管理責任者の皆様が、今まさに一番頭を悩ませているポイントについてお話しします。
「療育現場ってどうしても身体接触が多いけど、どこからがアウトなの?」
「トイレ介助や着替えのお手伝いも、性暴力って言われちゃうの?」
「パニックのお子さんを抱きかかえて止めるのは、大丈夫?」
そこで今回は、こども家庭庁のガイドラインをもとに、法律上の「児童対象性暴力」の定義と、今回新しく決まった「不適切な行為」について解説します。
何がダメで、何がOKなのか。一緒に確認していきましょう!

まず知っておいていただきたいのが、この法律(こども性暴力防止法)では、防ぐべき行為を2つの段階(レッドカードとイエローカード)に分けて考えている、ということです。
🟥 児童対象性暴力等(レッドカード)
刑法などの犯罪行為はもちろん、犯罪を構成しない場合でも、子どもの性的自由や尊厳を侵害する重大な行為です。
🟨 不適切な行為(イエローカード)
児童対象性暴力等には至らないものの、性暴力につながるおそれがある行為や、子どもの尊厳を傷つける行為です。
今回の法律のすごく大きなポイントは、犯罪行為(レッドカード)だけでなく、その手前にある「不適切な行為(イエローカード)」についても、事業所として防止策を講じなさい(研修やルール作りをしなさい)と義務付けた点にあります。
「犯罪じゃないなら、いいんじゃないの?」 そう思われるかもしれません。
でも、性暴力の加害者は、最初からいきなり犯罪を犯すわけではないんです。 徐々に子どもとの距離を詰め、特別な関係を作って支配していく……いわゆる「グルーミング」という段階を経てから、犯行に及ぶケースが非常に多いのです。
だからこそ、現場のリスク管理としては、犯罪が起きる前の「不適切な行為(イエローカード)」の段階で、いかに気付き、防ぐことができるか。これが最大の鍵になります。
ここは「絶対に許されない性暴力」の領域ですので、簡潔に整理します。ガイドラインでは、刑法等に触れる犯罪行為をはじめ、以下のような子どもへの重大な加害行為が「児童対象性暴力」として定義されています。
これらは、「療育の一環」などという言い訳が通用しない重大な行為です。疑いがある場合には、子どもの安全確保を最優先に、事実確認を行い、必要に応じて警察・児童相談所・所轄庁等の関係機関へ相談・通報する対応が求められます。
経営者様が就業規則やマニュアルを作るときに、一番頭を抱えてしまうのが、この「不適切な行為(イエローカード)」の線引きではないでしょうか?
「どこまで厳しく書けばいいの?」
「がんじがらめにしたら、職員が働きにくくなるんじゃ…」
そんな悩みにお答えするために、国のガイドラインでは、児童対象性暴力等につながるおそれのある行為や、子どもの尊厳を傷つける行為について、具体例が示されています。一つずつ、現場のリアルな場面を想像しながら確認していきましょう。
まずは言葉の暴力、セクハラです。 具体的にはこんなことが当てはまります。
※性的な言動についても、その内容・態様・継続性等によっては、単なる「不適切な行為」にとどまらず、「児童対象性暴力等」に該当し得る場合があります。
などが挙げられます。
🚨【児童対象性暴力等に該当し得る重大な行為】 なお、「水着で隠れる部分(プライベートゾーン)」を正当な理由なく触る行為や、「キスをする」といった行為は、単なる「不適切な行為(イエロー)」にとどまらず、「児童対象性暴力等」に該当し得る重大な行為です。
事業所内では、「絶対に許されない行為」として、服務規律や研修等を通じて厳格に周知する必要があります。
3つ目は、仕事の枠を超えたお付き合いです。
最後は、場所の問題です。

ここからが本題です。 障害児通所支援事業所では、身体介護や身体接触が日常業務です。
ガイドラインは、これら全ての接触を禁止しているわけではありません。 「正当な業務(療育・看護・介護)」と「不適切な行為」を分ける基準はどこにあるのでしょうか。
Q1. トイレ介助やおむつ交換は「不適切な行為」になりますか?
A. 業務上必要な範囲で、適切な方法により行われる介助であれば、直ちに不適切な行為に当たるものではありません。
ガイドラインでも、医療行為、看護、介護、療育上必要な介助は、性暴力等の対象外であることが明記されています。排泄介助は、子どもの健康と尊厳を守るために不可欠な業務です。
【現場での対応ポイント】
Q2. 着替えの手伝いで、裸を見ることは問題ですか?
A. 業務上必要であれば問題ありません。
ただし、不必要に裸の状態を長くさせない配慮が必要です。 「着衣失行(服の着方がわからない)」などの特性がある場合、支援として着替えを手伝うことは正当な業務です。
【現場での対応ポイント】
Q3. パニック時に暴れる子を抱きかかえて止めました。身体拘束や不適切な接触になりますか?
A. 自傷他害の恐れがある緊急時の対応は、正当な業務です。
子どもが自分を殴ったり、他のお子様に飛びかかったりする場合、職員が身体を使って止めることは「安全確保義務」として必要です。これを躊躇して怪我をさせてしまっては本末転倒です。
【現場での対応ポイント】
Q4. 泣いている子を慰めるために抱っこするのは?
A. 年齢や状況に応じた適切な範囲であれば問題ありません。
未就学児や、精神的に不安定になっているお子様へのスキンシップは、安心感を与えるための重要な支援技術です。しかし、ここに「職員の主観」が入るとトラブルの元になります。
【現場での対応ポイント】

経営者の皆様に、これだけは絶対に知っておいていただきたい言葉があります。
それが「グルーミング」です。
これは、加害者が子どもを手なずけ、精神的に支配して、抵抗できない状態にしていく行為のことです。
実は、一番怖いのはここなんです。 加害者の多くは、「自分は子どもを愛している」「僕とあの子は特別な関係なんだ」と本気で思い込んでいて、自分でも「わいせつ目的」であることを否定するケースが非常に多いんです。
例えば、こんな言い訳をする職員さん、いませんか?
「特定の児童との私的な境界線を越える行為」そのものを、「不適切な行為」としてルールで禁止する。これしか、エスカレートを防ぐ方法はありません。
ガイドラインで「連絡先の交換」や「私的なプレゼント」が禁止されているのは、単なるマナーの問題ではありません。この「グルーミングの入り口」を、物理的に塞ぐためなのです。
今回は「性暴力」と「不適切な行為」の境界線について、少し踏み込んだお話をしました。 最後に、今日の大事なポイントを振り返りましょう。
放課後等デイサービスや児童発達支援の素晴らしいところは、まるで家族のような、温かい関係性が築けるところですよね。 でも、だからこそ「プロとしての線引き」必要なんです。
さて次回は、いよいよ具体的な手続きの話に入ります!
第4回:いつ・誰に・どうやってチェックするの?(犯歴確認の実務フロー)
「システムの使い方は?」「急に人が辞めて、明日から人を雇いたい時はどうするの?」 そんな現場のリアルな疑問に、お答えしていきます。

※本記事は、2026年1月時点のガイドラインを基に作成しています。個別のケース判断に迷う場合は、所轄庁や専門家にご相談ください。
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千葉 直子
あいまり行政書士法人 代表・行政書士。
障がい福祉分野に特化し、障害福祉事業所の開設支援、顧問対応、運営指導・監査対応、法改正対応などを中心にサポートしています。制度理解にとどまらず、現場実務と法令遵守を見据えた実装支援を強みとしています。
2021年8月 とおる行政書士オフィス設立
2023年3月 あいまり行政書士オフィスへ事務所名変更
2024年7月 あいまり行政書士法人として法人化

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