代表・行政書士
千葉直子
障害福祉専門 あいまり行政書士法人 代表行政書士 千葉直子
放課後等デイサービス・児童発達支援、就労系を中心に、障害福祉事業の開設支援から運営支援、法改正対応、運営指導対策まで一貫してサポートしています。制度の条文解釈だけでなく、現場実務や事業継続を見据えた「実装できる制度対応」を重視し、事業者が安心して支援に専念できる体制づくりを支援しています。福祉系大学卒業
Contents
放課後等デイサービス・児童発達支援の現場では、身体接触を伴う支援が日常的に行われています。では、日本版DBS(こども性暴力防止法)でいう「児童対象性暴力等」と「不適切な行為」は、どこで線引きされるのでしょうか。本記事では、こども家庭庁ガイドラインをもとに、トイレ介助・着替え・パニック時対応など、障害児通所支援事業所で実際に起こる場面を例に、療育現場で気をつけるポイントをわかりやすく解説します。
目次
~療育現場で気をつけるポイント~ 【※令和8年5月18日追記・再整理しております】
こども性暴力防止法、解説シリーズ、第3回です。
今回は、放課後等デイサービスや児童発達支援の経営者様、そして児童発達支援管理責任者の皆様が、今まさに一番頭を悩ませているポイントについてお話しします。
「療育現場ってどうしても身体接触が多いけど、どこからがアウトなの?」
「トイレ介助や着替えのお手伝いも、性暴力って言われちゃうの?」
「パニックのお子さんを抱きかかえて止めるのは、大丈夫?」
こども家庭庁のガイドラインをもとに、法律上の「児童対象性暴力等」の定義と、「不適切な行為」について解説します。
一緒に確認していきましょう!

Q1. 「こども性暴力防止法」の正式な名前は何ですか?
「こども性暴力防止法」は通称です。
正式な法律名は、
学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律
です。
法律番号は、令和6年法律第69号です。
こども性暴力防止法は、
令和8年(2026年)12月25日(金)
から施行されます。
放課後等デイサービスや児童発達支援など、こどもと関わる事業所では、施行日に向けて少しずつ準備を進めていくことが大切です。
この法律は、こどもを性暴力等から守るための法律です。
こどもへの性暴力等は、こどもの権利を大きく傷つけるだけでなく、その後の心や体の成長にも深刻な影響を与えるおそれがあります。
そのため、この法律では、学校や保育所、障害児通所支援事業所など、こどもに教育・保育・支援を提供する事業者に対して、性暴力等を防ぐための取組を求めています。
具体的には、日頃からの見守り、相談しやすい体制づくり、研修、犯罪事実確認、万が一疑いが生じた場合の対応などが重要になります。
Q. 「児童対象性暴力等」とは、どのような行為ですか?
法律上は、教育職員等による児童生徒性暴力等防止法に定められている「児童生徒性暴力等」や、それに相当する行為を指します。
具体的には、例えば次のような行為が含まれます。
つまり、「犯罪になる行為」だけでなく、
こどもの性的な尊厳を傷つけ、心身に悪影響を与えるような言動も含まれる点に注意が必要です。
「不適切な行為」とは、
それ自体はすぐに「児童対象性暴力等」に当たるものではないものの、業務上どうしても必要な行為とはいえず、そのまま続いたり、発展したりすると、児童対象性暴力等につながるおそれがある行為をいいます。
たとえば、こどもとの距離感が近くなりすぎたり、公私の区別があいまいになったりすると、支援や指導の範囲を超えてしまう危険があります。
そのため、事業所としては、
「これはまだ性暴力ではないから大丈夫」と考えるのではなく、
児童対象性暴力等につながる前の段階で、不適切な行為に気づき、改めていくことが大切です。
「不適切な行為」の具体例としては、次のようなものがガイドラインにあげられています。
これらは、こどもとの距離感が近くなりすぎたり、公私の区別があいまいになったりするきっかけになり得る行為です。
ただし、ここで注意が必要なのは、
これらの行為に当てはまるからといって、すべての事業所・すべての場面で一律に「不適切」と判断されるわけではないという点です。
「不適切な行為」に当たるかどうかは、
などによって変わる場合があります。
そのため、事業所ごとに、現場の実情を踏まえながら、
どのような行為を防ぐべきか、どのような支援は業務上必要なものなのかを整理しておくことが大切です。
「不適切な行為」の中には、行為の内容や状況によって、より重く見るべきものがあります。
これを「重大な不適切な行為」といいます。
たとえば、単なる不注意ではなく、
といった事情がある場合には、「重大な不適切な行為」に該当し得ます。
具体例としては、
などが挙げられます。
つまり、同じような行為であっても、
「嫌がっていることを分かっていたか」
「執拗に行っていないか」
「被害や悪質性が大きいか」
によって、より重大な問題として扱われる場合があります。
障害児通所支援事業所では、身体介護や身体接触が日常業務です。
ガイドラインは、これら全ての接触を禁止しているわけではありません。 「正当な業務(療育・看護・介護)」と「不適切な行為」を分ける基準はどこにあるのでしょうか。
Q1. トイレ介助やおむつ交換は「不適切な行為」になりますか?
A. 業務上必要な範囲で、適切な方法により行われる介助であれば、直ちに不適切な行為に当たるものではありません。
【現場での対応ポイント】
Q2. 着替えの手伝いで、裸を見ることは問題ですか?
A. 業務上必要な範囲で、児童の年齢・発達段階・障害特性・羞恥心・プライバシーに配慮して行われる支援であれば、直ちに不適切な行為に当たるものではありません。
ただし、不必要に裸の状態を長くさせない配慮が必要です。 「着衣失行(服の着方がわからない)」などの特性がある場合、支援として着替えを手伝うことは正当な業務です。
【現場での対応ポイント】
Q3. パニック時に暴れる子を抱きかかえて止めました。身体拘束や不適切な接触になりますか?
A. 自傷他害のおそれがある緊急時に、安全確保のため必要最小限の範囲で行う対応は、直ちに不適切な接触と評価されるものではありません。
子どもが自分を殴ったり、他のお子様に飛びかかったりする場合、職員が身体を使って止めることは「安全確保義務」として必要です。これを躊躇して怪我をさせてしまっては本末転倒です。
※なお、身体拘束に該当し得る対応については、障害児通所支援の基準上の要件、記録、検討等が別途必要となる場合があります。
【現場での対応ポイント】
Q4. 泣いている子を慰めるために抱っこするのは?
A. 年齢や状況、児童本人の反応等に照らして、支援上必要かつ相当な範囲であれば、直ちに不適切な行為と評価されるものではありません。
未就学児や、精神的に不安定になっているお子様へのスキンシップは、安心感を与えるための重要な支援技術です。しかし、ここに「職員の主観」が入るとトラブルの元になります。
【現場での対応ポイント】

今回は、「児童対象性暴力等」と「不適切な行為」ついて整理しました。現場と職員を守るためにまず重要なのは、「まだ性暴力ではないから大丈夫」と見過ごさないことです。重大な事態へ発展する前の「不適切な行為」の段階で気づき、組織として是正していくことが未然防止の要となります。
放課後等デイサービスや児童発達支援における温かい関わりは、こどもたちにとって不可欠です。ルールの厳格化を恐れて、本来必要な支援まで萎縮してしまっては本末転倒です。「必要な支援」と「不適切な行為」の境界線をマニュアルや研修で明確にし、こども・職員・事業所の全てを守るための体制を少しずつ整えていきましょう。
さて次回は、いよいよ具体的な手続きの話に入ります!
第4回:いつ・誰に・どうやってチェックするの?(犯罪事実確認の実務フロー)
「システムの使い方は?」「急に人が辞めて、明日から人を雇いたい時はどうするの?」 そんな現場のリアルな疑問に、お答えしていきます。

※本記事は、2026年1月・4月時点で公表されている国の情報をもとに、障害福祉専門行政書士の視点から、現場向けに整理したものです。
実際の支援現場で「このケースはどう判断すべきか」と迷われる場合は、自己判断せず、管轄の自治体窓口や、こども性暴力防止法に詳しい専門家(弁護士等)へご相談ください。
必要に応じて、当法人から信頼できる専門家をご紹介することも可能です。
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千葉 直子
あいまり行政書士法人 代表・行政書士。
障がい福祉分野に特化し、障害福祉事業所の開設支援、顧問対応、運営指導・監査対応、法改正対応などを中心にサポートしています。制度理解にとどまらず、現場実務と法令遵守を見据えた実装支援を強みとしています。
2021年8月 とおる行政書士オフィス設立
2023年3月 あいまり行政書士オフィスへ事務所名変更
2024年7月 あいまり行政書士法人として法人化

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